(=゚д゚)夢鳥花虎のようです

1 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 18:52:48.952 ID:Wo5nfMAQ0.net
これまでのまとめ
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/internet/21864/1525688264/

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┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻┻
前回の夢鳥花虎……
ジャーゲンで連続女児強姦殺人事件発生
被害者が増える中、トラギコ単独での捜査が命じられる
そしてついに、トラギコが恐れていた事態が起きてしまう――
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これで第三章は終わりとなります

はじまるよー
こわくないよー
よっといでー

27 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:05:58.818 ID:Wo5nfMAQ0.net

(,,゚Д゚)「何?」

「あいつ、クスリをキメて仕事をしようとしてたんですよ。
だから俺が、クスリをキメるなら辞めろ、って言ったんです。
そしたらあいつ、俺の目の前でキメてからここを出て行ったんですよ。
そのくせ、髪は丸坊主にしてきて、順序が逆だってんですよ」

(,,゚Д゚)「どれぐらい前の話だ」

「つい十分前です。
今頃宿舎に荷物を取りに行ってると思いますが」

この瞬間、トラギコはビンズが犯人であると確信した。
万が一警察に捕まった場合でも、薬物を日常的に摂取していた事が証言されれば、刑罰はかなり軽くなる。
それがこの街の法律だ。
あえて従業員の前で薬物を使用することで、その証言の強さを確かなものにするという、極めて悪質な方法。

未成年でなおかつ判断能力が欠如した状態での犯行となれば、間違いなく、この男は死刑にはならない。

(,,゚Д゚)「宿舎はどこだ」

焦りを抑え込みながら、トラギコは質問をした。

「この先を線路沿いにまっすぐ北に行ったところに、各社共同の宿舎があります。
そこの703です」

(,,゚Д゚)「もし奴を見かけたら捕まえておくよう、従業員に指示を出しておけ。
    いいな、絶対に逃がすな!!なんなら他の会社にも伝えておけ!!」

建物を出て、トラギコは全力で走り出した。
携帯電話を取り出して、ビロードに急いで電話をかける。

( ><)『どうしました?』

(,,゚Д゚)「容疑者はビンズ・アノールって男ラギ!!十分前にヤクをキメてる!!
    俺は宿舎に向かうから、お前は応援を呼んで出入り口を塞げ!!」

( ><)『わ、分かりました!!』

顔に吹き付ける風が刺すように冷たい。
冷え切った空気を取り込んだ肺が痛む。
まるで氷柱を喉と肺に突き刺されているようだ。
線路の上にはエライジャクレイグの貨物列車が停車しており、男達が荷物の積み込みを行っていた。

男達はトラギコを怪訝な目で見つめたが、すぐに仕事に戻った。
雪のせいで思ったよりも早く走れず、宿舎に到着するのに五分の時間がかかってしまった。
宿舎は背の高い建物が連なる古いもので、セキュリティとは無縁の構造をしていた。
この埠頭を仕事場にする人間の数にしては、部屋数が多すぎるようにも思える。

一部を貸し部屋として機能させ、遠方から来た人間を一時的に泊めるようにしているのかもしれない。
部屋番号から察するに七階にあると予想し、階段を駆け上った。
七階に到着した時、ある部屋から男が一人出てきた。
マスクをつけ、白いロングコートで全身を覆い、更にはフードを目深に被っているため顔を確認することはできない。

だが、男が出てきた部屋の番号は703。
トラギコと目が合った瞬間、男は走り出した。
トラギコは冷静に、かつ素早くM8000を懐から抜き、男の足を撃った。
正確に膝関節を後ろから撃ち抜かれた男は、顔からその場に転倒する。

(,,’゚ω’゚)「あひっ?!」

19 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:49:52.020 ID:Wo5nfMAQ0.net

一刻も早く容疑者を捕まえ、事件を終わらせたいという気持ちだけが大きな音を立て、熱を帯びてトラギコの体を血と共に駆け巡る。
寒さは大して感じなかった。
感じるのは、焦りに似た感情だった。
コンテナ林を囲むフェンスの前には、小さなプレハブ小屋が建っていた。

それが出入りを管理するための建物だと分かるのには、時間はあまり必要なかった。
プレハブの窓からは明かりが漏れ、ラジオの音に混じって時折笑い声が聞こえてくる。
等間隔に設置された街灯のオレンジ色の明かりが周囲一帯を染め上げ、不気味な雰囲気を漂わせている。
潮騒と潮の香り。

仄かに鉄の匂いもする。
ここに硝煙の匂いが混じらないことを願うばかりだ。
九時二十三分。
トラギコはフェンスにもたれ掛かり、後の二人が到着するのを待った。

五分後、ビロードが現れた。
流石に警察の制服ではなく、ダウンコートを着て厚手のジーンズをはいていた。

( ><)「お待たせしました」

(,,゚Д゚)「あと一人来るラギ。
    ちょっと待ってろ」

( ><)「あと一人?誰なんですか?」

(,,゚Д゚)「アサピー・ホステイジってジャーナリストだ」

(;><)「アサピー?!
     僕でも彼の悪評は知っていますよ」

(-@∀@)「ははっ、酷い言いぐさですな。
     若きエース、ビロード・フラナガン」

暗闇から溶け出すようにして現れたのは、全身黒い服に身を包んだアサピーだった。
その手にはしっかりとカメラが握られており、背中には三脚を背負っていた。

(,,゚Д゚)「ここにいるって話だが、今いるかは分からねぇラギ。
   ビロード、アサピーと一緒に探してくれ。
   そいつが容疑者の顔を知ってるラギ」

( ><)「……分かりました」

(-@∀@)「よござんす」

(,,゚Д゚)「ビロード、見つけ次第テーザーを撃っていいラギ。
   話は奴を捕まえてからだ」

それを聞いたアサピーが少し驚いた表情を浮かべる。

(-@∀@)「いいんですかい?あたしの前でそんな事言っちまって」

(,,゚Д゚)「俺がどういう男か知ってるだろ」

(-@∀@)「へへっ、分かってますよ。
     それに今回は警察のスキャンダルなんかよりも、事件の犯人を捕まえる方がよっぽどネタとしていいんでね」

この男の報道に対する執着心は信用ならない部分があるものの、逆に、その執着心を理解して使えば優秀な駒となる。
民間人の情報提供者よりもゴシップに貪欲で、一枚の写真を撮るためだけに何日も平気で張り込み、道徳観を無視した行動を行える。
警察としては厄介な存在だが、使い方次第では警官以上の情報収集・追跡能力を有した逸材になり得るのだ。
ビロードと組ませたのは確かに、彼が犯人の顔を知っているからというのもあるが、アサピーが犯人に余計なことをしないようにビロードに監視させる意味もあった。

3 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 18:59:56.718 ID:Wo5nfMAQ0.net

今回は掃除屋よりも早く現場の確保に成功したから良い物の、前回のように途中で奪われでもしたらイトーイの努力が無駄になる。
彼が得た証拠品以外にも現場には山のように痕跡が残されていた。
本来であればこれほど杜撰な犯行に及ぶ人間でありながら、これまでに証拠が出てこなかったのはあまりにも速すぎる掃除屋の対応が問題だったと言えよう。

( ”づ)「掃除屋ですか?ですが、ここの施設の人間が同意をしなければ……」

これまでは被害者が単独で、保護者からの依頼によって遺体の清掃が行われた。
だが、このような施設の場合はその決定権を握るのは施設長だ。
施設関係者は今、警察車両に乗せてゆっくりとした速度で移動している最中だ。
そう簡単に連絡を取って買収することは出来ない。

これまでとは違い、いち早く現場に到着できたのはトラギコ達だったために、相手の動きを封じる事が出来た。
保護された女児と遺体からも男の体液を採取できていたが、毛髪と合わせることで犯人を確実に特定することが出来る。

(,,゚Д゚)「これまでの経緯を見てれば分かるが、相手はかなり強引な手段で証拠を消しに来るラギ。
    だからこの証拠品は俺が預かるラギ」

鑑識官の男は少し考え、袋をトラギコに手渡した。

( ”づ)「この事件、必ず終わらせましょう」

(,,゚Д゚)「あぁ、勿論だ。
    絶対に犯人をムショにぶち込んで死ぬほど後悔させてやるラギ」

ジャケットの懐に袋を入れ、現場をこれ以上汚さないために階段を下りて行った。
一階に到着した時、警官達と揉める一団があった。

「だから、俺達は仕事を依頼されたんだよ!」

「そんな話は聞いていない、今すぐ引き返せ!!」

青いつなぎを着た清掃業者と思わしき男達が道具を手に、入り口を塞ぐ警官達に詰め寄っている。
近くにいた警官にトラギコは声をかけた。

(,,゚Д゚)「どうしたラギ」

「清掃業者が現場の清掃を依頼されたと言っているんです。
我々にそんな情報は来ていないので、通すわけにはいかないんです」

(,,゚Д゚)「俺が話をしてやるラギ。
    少し離れてろ」

そう言いながら、トラギコの手はホルスターに伸び、M8000を掴んでいた。
安全装置を解除し、遊底をこれ見よがしに引いて初弾を薬室に送り込んだ。
撃鉄はすでに起き、銃爪に僅かな力を加えるだけで鉛弾が飛び出す。
その銃腔は、清掃業者たちに向けられた。

(,,゚Д゚)「失せろラギ。
    現場を荒らされてたまるか」

「なっ!?俺達一般市民に銃を向けるのかよ!」

一番声と体の大きなその男以外、業者たちは大きく退いた。
警官達も一歩後退し、トラギコと大柄の男が対峙する。
銃腔は男の胸に向けられ、トラギコの指は銃爪に軽く添えられていた。

(,,゚Д゚)「一般市民だろうが何だろうが、捜査の邪魔をするんじゃねぇラギ」

「俺達は仕事を頼まれてるんだ、そっちが邪魔するな!」

10 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:29:09.807 ID:vmNCFRd3a.net

しえしえ

53 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:01:09.462 ID:Wo5nfMAQ0.net

(`・_ゝ・´)「弁護側、以上です」

ライトの言葉で弁護側の証言が終わり、ビンズが腰を下ろした。

「検察側、尋問を」

「裁判長、尋問する人間を交代します」

「許可します。
代理人は氏名と所属を」

トラギコは立ち上がり、淡々と名乗った。

(,,゚Д゚)「トラギコ・マウンテンライト。
    刑事だ」

「では、尋問を」

(,,゚Д゚)「クスリを使用し始めた時期はいつからだ」

(::゚∀゚::)「今年からでーす」

座ったままのビンズがあくび交じりにそう答えた。

(,,゚Д゚)「最近使ったのは?」

(::゚∀゚::)「あんたが俺を捕まえた日だよ」

(,,゚Д゚)「正確な時間を言えラギ」

(::゚∀゚::)「あの会社の連中に聞けば分かるだろ、馬鹿かお前は」

(,,゚Д゚)「こちらが得ている情報では、夜九時半前後だ。
    間違いないな?」

(::゚∀゚::)「はーい、そうでーす」

その言葉を待っていた。
この男は自分で事態を考え、判断する力が無い。
だがそれは薬の影響ではなく、個人の持ち合わせている資質的な問題で、自分で何かを解決することが出来ない。
その原因は、周囲の人間が彼の尻拭いをしてきたためである。

(`・_ゝ・´)「裁判長、これ以上の尋問は無意味です。
     被告はこのように、事件当時、判断能力が欠如した状態でした。
     弁護側は懲役六か月を提案し――」

(,,゚Д゚)「――異議あり、だ。
    そいつは事件当時、薬をキメてなかったラギ。
    むしろ、今回が初めてラギ」

トラギコの発言に、傍聴席がざわめきだす。
すかさずライトが席を立ち、異議を申し立てる。
それもトラギコの計算の内だとは知らずに。

(`・_ゝ・´)「異議あり。
      根拠のない言いがかりです。
      逮捕時の検査結果で薬物反応が出ています」

「検察側、証拠はあるのですか?」

38 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:27:47.738 ID:Wo5nfMAQ0.net

(,,゚Д゚)「下の棚にあった証拠品。
    何の事件の物だ?」

(‘A`)「……さぁ」

(,,゚Д゚)「そう、分からねぇんだよ。
    何せ全部燃えちまったからな。
    鑑識が機転を利かせて上の物は守れたが、問題はその下にあった物が何だったのかってことラギ。
    燃やした張本人なら分かるだろ、ドクオ」

深い溜息がドクオの口から洩れた。

(‘A`)「どうして俺だと?」

(,,゚Д゚)「俺がバーバラ・ホプキンスの名前を教えたのは、お前だけなんだよ。
    あのホテルに来た連中は全員死んだから、俺がバーバラの名前を知った事を知る人間はそういないラギ。
    なのに、そいつは翌日には自殺したことになってるラギ。
    なら、署内にいる裏切り者はお前しか考えられないんだよ。

    そいつが火を放ったなら、この上なく理屈に適ってるからな」

(‘A`)「俺とお前のよしみだからその推理は聞き流してやるよ。
   お前、少し疲れてるんだよ」

本当であればそうしたかった。
勘違いであると信じたかったが、状況が全てを物語っている。

(,,゚Д゚)「あぁ、疲れてるさ。
    だから教えてくれないか?どうして、バーバラが男だって分かったんだ?」

(‘A`)「それはお前が」

(,,゚Д゚)「俺はバーバラ、としか言ってない。
    それなのにお前はバーバラ・ホプキンスのフルネームを知っていて、尚かつ男だってことまで断定してたラギ。
    これはつまり、確信があったんだろ。
    普通、バーバラって言えば女の名前だ」

(‘A`)「表現の違いだよ、悪かった」

(,,゚Д゚)「それに、俺はバーバラが何者かも言っていなかったラギ。
    ならまず、バーバラという女全般を調べるべきなのに、ピンポイントで、おまけに性別まで言い当ててきたラギ。
    理由を言えよ、ドクオ」

(‘A`)「タイミング的にそいつだと思ったんだ、それ以外には何もないよ。
   現に、死体として運ばれたのはその一人だけだ」

(,,゚Д゚)「何で俺の言ったバーバラがもう死んだと言いきれるんだ?他の人間の可能性もあり得るだろ」

(‘A`)「……ははっ」

彼の口から乾いた笑い声が聞こえた。
彼の性格はよく分かっているつもりだ。
あと一押しで、彼の口を割れるとトラギコは確信した。

(,,゚Д゚)「やっぱり何度考えてもお前しかいないんだ。
    本当に燃やしたかった証拠品は別にある。
    そして、お前が燃やしたのは、あの日の火災現場で焼け残った何かだ。
    思いがけない何かが見つかって、それを処分するためにお前は動いた。

    違うか」

72 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:54:28.758 ID:0HXpnj9ha.net

因果応報…なのか

18 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:47:47.604 ID:Wo5nfMAQ0.net

カウンターの上に百ドル金貨を二十枚ほど無造作に置いて、先ほどから固まっていた店主に声をかける。

(,,゚Д゚)「これで店の連中に奢れるだけ奢ってくれラギ」

コートを肩にかけて店の外に出ると、すっかり景色は白一色に染まっていた。
真っ白い息を吐き、気分を落ち着かせる。
後一歩のところまで迫ってきている。
そう考えると、否応なしにトラギコの全身の筋肉が緊張した。

容疑者を逮捕する時、多少手荒な真似をしても問題はない。
肋骨を数本と腕、後は足を折った状態で取調室に送り込むことを考えた。
ダウンコートを着て、ファスナーを一番上まで上げる。
携帯電話を使って、まずはビロードに連絡を入れた。

(,,゚Д゚)「俺だ。容疑者の位置が分かったラギ。
    コンテナ林で合流するぞ」

( ><)『分かりました。
     丁度この天候のおかげか、特に事件もないので向かいます』

腕時計に目をやる。
蓄光塗料が指し示すのは、夜の八時十五分。

(,,゚Д゚)「九時半に合流できるラギか」

( ><)『行けます。
     では、その時間にコンテナ林の入り口で』

一度電話を切り、歩きながら次の人間に電話をかけた。

(,,゚Д゚)「アサピーか?」

(-@∀@)『おや、お早いことで。
     ってことは、何か情報が手に入ったんですね?』

(,,゚Д゚)「お前の言う通り、奴の目撃情報があったラギ。
    俺はこれから奴を捕まえに行くが、どうするラギ」

(-@∀@)『そりゃあ勿論、あたしも同行させてもらいまさぁ。
     スクープの瞬間は逃さないのが鉄則なんでね。
     それで、時間と場所は?』

(,,゚Д゚)「手前が邪魔をしないって約束するんなら教えてやるラギ。
    いいか、間違ってもインタビューをしようなんて考えるなよ」

(-@∀@)『……分かってますよ』

(,,゚Д゚)「九時半にコンテナ林ラギ。
    お前も一緒に探して、見つけ次第連絡をよこしてくれラギ」

(-@∀@)『へへっ、捕まえるところだけ撮れればそれでいいんで』

通話を終え、トラギコは両手を上着のポケットに入れて歩き出す。
雪はすでに踝の上まで積もっているが、空からは何も降ってきていなかった。
明日になればまたこの雪は溶け、何事もなかったかのように一日が過ぎるだろう。

轍を辿るようにして歩くことで、余計に濡れる面倒を省く。
まだ九時前なのに車の往来はまるでなく、街全体が静まり返っていた。
極めて静かな夜に聞こえるのは風の音と、雪を踏み潰す音。
凍るように冷たく澄んだ空気が肺を満たす。

16 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:45:06.068 ID:Wo5nfMAQ0.net

(,,゚Д゚)「お前らの知っている限りで良いラギ。
    七月に同じことをして捕まった男の行方を知りたいラギ」

少しの間があった。
誰かが唾を呑む音さえ聞こえてくる、痛いほどの沈黙。

「し、知ってる」

沈黙を破ったのは、先ほどトラギコに食って掛かってきた女だった。

「名前は知らないけど、よくいる場所なら知ってる」

(,,゚Д゚)「どこだ、そいつはどこにいるラギ」

「埠頭のコンテナ林だよ、俺も昨日見た」

コンテナ林とは、ジャーゲンの東にある港の一角の事だ。
高く積まれたコンテナが林のようにいくつも聳え立ち、毎日その形を変えることからそのように呼ばれている場所。
だがそこは輸出入に関係する人間だけが出入りをする場所で、街との境目は高さ五メートルのフェンスで区切られている。
船舶と貨物列車だけが利用するその場所には当然ながら、大勢の人間と貴重な品々が出入りをする。

万が一に備えて、無関係な人間が出入りをしないように設置されたフェンスには高圧電流が流れており、毎年数人の死者が出るという。
運輸に関わらない人間はまず立ち入ることのないジャーゲン経済の心臓部に、どうしてこの若者たちがいたのだろうか。

「あそこにゃ、結構ヤバい薬とか売ってる人間が来るからね。
言っとくけど、あたしは薬のために行ったんじゃないからね。
彼氏があそこで働いてるんだ」

「お、俺もクスリにゃ手を出しちゃいねぇよ」

密輸手段はさておいて、確かに、人の入れ替わりが激しい場所であればそういった取引がされていることは不自然ではない。
交易の拠点となる場所では後腐れなく仕事が出来る為、売春や売買が横行する。
トラギコ達はその場所に近づかないよう市長から命令が出されており、基本的には運送関係の人間達で自治をするように特別な扱いがされていた。
つまるところ、市長はその犯罪行為を認知しているのだ。

(,,゚Д゚)「分かったラギ。
    コンテナ林だな」

「あそこはサツを歓迎していないことぐらい知ってるだろ、本気で行くのかよ」

(,,゚Д゚)「歓迎されていようがいまいが、俺のやることは変わらねぇラギ。
    他に何か情報を持ってる奴はいるか?」

「役に立つかは知らねぇが」

そう言ったのは、先ほどトラギコの言葉に動揺して泣いていた男だった。
目を赤く腫らし、鼻水をすすりながら言葉を続ける。

「そいつはトリックスター運輸って会社の制服を着てた」

(,,゚Д゚)「今も働いてるのか、そいつは」

「一か月ぐらい前の話だから、今はどうか知らねぇ。
後、多分だけどそいつ、ブルーハーツにいたことがある奴だと思う。
俺もそこにいたから、なんとなくだが……」

(,,゚Д゚)「そうか……何にしても助かるラギ。
    さて、俺はもうこの店を出るラギ。
    戻ってくることはねぇだろうから、後は好きに楽しんでてくれラギ」

64 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:26:39.274 ID:Wo5nfMAQ0.net

(;,,゚Д゚)「糞っ……!糞……がっ……!」

木槌が降ろされ、裁判長の言葉が遠く聞こえる。

「これにて閉廷!!」

ビンズの狂ったような嘲笑が響き渡る。

(::゚∀゚::)「あはははは!!残念だったなぁ、刑事さんよぉ!!
     俺、真人間になるからさぁ、応援してくれよなぁ!!」

一度出された判決は覆らない。
この男は再び名を変え、世間に戻ってくる。
戻り、そしてまた子供を凌辱して殺すのだ。
何人もの子供の命を侮辱した手で、いつか我が子を抱くのかもしれない。

何食わぬ顔で愛をささやくのかもしれない。
殺された子供たちにはそんな未来は得られないというのに、この男はその未来を手にし、再び未来を汚すのだ。
憤りがトラギコの体を動かした。
突き刺さった電極を掴み、無理やり取り去った。

痛みはなく、全身の血の気が引くほどの怒りだけがトラギコの体にあった。
ゆっくりと立ちあがり、笑い声をあげるビンズを睨みつける。

(;,,゚Д゚)「手前らは……絶対に……許さねぇラギ……!!」

「被告人を早く連行しなさい!!その刑事も早く!!」

そして二度目の電流がトラギコの意識を奪い去り、裁判に幕を下ろした。

‥…━━ 十二月十六日 午後十時 某マンション ━━…‥

その日の夜、サナエ・ストロガノフとジョセフ・アルジェント・リンクスは裁判所からすぐに彼女のマンションに帰宅し、家中の鍵とカーテンを閉め、耳栓をして翌朝を待つことを選んだ。
電気は決してつけず、物音も極力立てないように務めた。
全てが最悪の展開だった。
トラギコによって彼女のささやかな抵抗の何もかもが無に帰し、これから先の人生が暗雲に満ち溢れた。

たった一度の過ちが、全てを狂わせた。
市長の甘言に乗り、体を預け、そして身籠った命。
その命を育てることが出来ないと判断したサナエは、ためらうことなく施設に捨てることにした。
せめてもの情けとして、クリント、という名前を残してやった。

そして身の回りが固まり、将来が盤石なものになって来た時、問題が起きた。
女児に手を出したことが分かったのだ。
このままではいつか大事になる。
そう判断した市長とサナエは、法改正によってリスクを回避することにした。

捨てたとはいえ、自分達の子供を殺すことは出来なかったのだ。
そして危惧した通り、彼は何度も事件を起こした。
先日の養護施設襲撃を含めて、二十一回の犯行だった。
その全てにサナエたちは対処することとなり、いつしか彼は、自分は何かに守られているのだと理解するようになってしまった。

事件が起きれば警察よりも先に清掃業者を向かわせ、証拠を隠滅し、保護者は大金で買収した。
この街の人間は金が無い。
街がどうにか維持できているのも、人身売買と薬物売買の拠点と言う非合法的な商売が成り立っているからであり、一般家庭には無縁の話なのだ。
金で動かない人間はまずいない。

65 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:27:49.140 ID:hh2AZhgUa.net

しえん

57 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:10:04.264 ID:Wo5nfMAQ0.net

(,,゚Д゚)「黙れよ弁護士、まだ俺が話してるんだ。
    ここに、ブルーハーツで保管されていた男児の歯があるラギ。
    その男児のDNA情報とビンズの物を比較し、同一人物だって検査結果が出たラギ。
    今朝の事だ。

    つまり、この時点で恐れたのさ、市長たちは。
    自分達が捨て、自分達の遺伝子情報を持つ子供が罪を犯すことを。
    もし何かの拍子でDNA鑑定でもされたら、自分達のスキャンダルが公になるだけじゃなく、手前等の餓鬼が正真正銘の屑だって知れ渡るからな。
    だから法律を変え、強姦現場にDNA情報が残らないように手を尽くしてきたんだ。

    ちなみに、クリントって名前は赤ん坊にそう書かれた紙が貼り付けられていたからだそうだ。
    後で筆跡鑑定をしてみれば何か面白いことが分かるんじゃないか?
    クリント・アルジェント・リンクスって名前の、糞市長の糞息子だって事がなぁ」

事件の背後に見えてきたのは、スキャンダルと腐ったプライドだった。
傍聴席の二人を見て、トラギコは最後の言葉を締めくくった。

(,,゚Д゚)「そうだろ、二人とも?」

「弁護側の異議を却下します。
ですが、検察側は本件に関係のない事件について話を広げないように」

(,,゚Д゚)「そいつは初犯じゃない。
    それに更生もしない。
    そして、自分の立場を利用して子供たちに対して下種な行為をしたラギ。
    精神異常でも薬物中毒でもない。

    ただの屑野郎なんだよ、こいつの正体は」

(;`・_ゝ・´)「異議あり!精神鑑定の結果、彼は精神に異常をきたしており、判断能力と倫理観に関して問題があります」

(,,゚Д゚)「その精神鑑定をした医者のスーツ、最近高級なやつに変わったんじゃないのか?」

(;`・_ゝ・´)「異議あり!検察側はいい加減な憶測で物を言わないでいただきたい」

(,,゚Д゚)「異議あり、でいいんだよな?現にこっちは、所長が証拠隠滅を指示する旨の発言と、それを裏付ける証拠を持ってるラギ。
    昨日、署内で起きた火災で焼け残った証拠品の一つがあるラギ。
    こいつは、警察で使われていた装備で、シリアルナンバーも残ってるラギ。
    照合すればどこに本来あるはずの物なのか、一発で分かるラギ。

    例えばこれが、本来であればジャーゲン警察で採用されているはずの装備一式で、まだそれが署内の誰にも伝達されていないものであることが分かるはずだ。
    これだけ好き放題する奴が、まさか精神科の医者一人を買収できないはずがない!!」

「静粛に!双方、静粛に!」

だが静粛にならなければならないのは、その場にいる全員だった。
傍聴席にいる人間達はジョセフとサナエから距離を置き、セントジョーンズはサナエの後ろに立った。

▼ ,’ 3 :「セントジョーンズ、私を疑うのか?」

(’e’)「いいえ、私はトラギコを信じているだけです」

法廷中が十分に加熱し切っている事を確信し、トラギコはその炎が沈静化するのを笑顔で待った。
そして静けさが戻り、裁判長が口を開きかけたところで、満を持してドクオから受け取ったボイスレコーダーを起動した。

▼ ,’ 3 :『いいか、証拠品を全て消すんだ』

(‘A`)『流石にそんなことをしたら疑われますよ』

36 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:24:15.700 ID:Wo5nfMAQ0.net

「最初からです」

(::゚∀゚::)「あー、最初っからですか。
    えーっと、確か……小さくていい締め具合でした。
    殴るたびに締めてくるので、ナニがもがれるかと」

裁判長が木槌を思い切り叩き付け、ビンズの言葉を遮った。

「事件の概要を話しなさい!!」

(::゚∀゚::)「あぁ、はい。
    六日のはよく覚えていないですけど、七日は業者の服を着て行ったらコロッと信じて家の中に入れたので、そのまま。
    馬鹿みたいですよね、知らない人間を家に入れるって。
    だからそれは覚えてます。

次の穴は普通に買ったんです。
だから僕の所有物を壊しただけで、それは特に問題はないんじゃないですか?」

傍聴席からどよめきが起きる。
この男は正常ではない。
異常な人間だ。

(::゚∀゚::)「でー、あぁ、あの施設にケーキを送ったんですよ。
    施設の人間も阿呆ですよね、送られたケーキを食べさせるなんて。
    まぁおかげで僕も美味しい思いが出来たからいいんですけどね。
    男はどうでもいいから死んでもらって、女の子と一緒に遊んだんです。

    楽しかったなぁ、皆動けないけど涙を流したり、抵抗したりするんです。
    で、楽しんでたら雄ガキが起きて殴って来たから、やり返した。
    そっか、これは正当防衛ってやつですよ」

ライトは目頭を押さえ、ビンズの証言に頭を悩ませていた。
打ち合わせにない展開、そして弁護士が危惧していた事態が起きたと考えるべきだろう。

(::゚∀゚::)「以上です」

「……弁護側、何かありますか」

(`・_ゝ・´)「今は何もありません」

「検察側、何か」

「こちらも、今は何もありません」

尋問については明日行われることになる。
今日は双方ともに情報を確認する場であり、本格的な弁護等は行われない。
ここで裁判長を始めとする多くの人間に伝えられたのは、犯人の異常性だった。
予想に反して一日目の裁判が終わり、傍聴人たちがぞろぞろと裁判所を出て行く。

( ><)「トラギコさん、大丈夫ですか?」

(,,゚Д゚)「ん?ああ、俺は大丈夫ラギ」

隣に座っていたビロードが心配そうに覗き込んでいるのに気付き、トラギコも席を立った。
あの男、自分が逮捕されたというのに極めて冷静だった。
嘲るでもなく、慌てるでもなく、ただ逮捕されたという現実をそのまま以下の意味で受け取っているようにしか見えない。
精神的な余裕があるようにしか見えない。

何か、切り札でも持っているのだろうか。
裁判所の廊下を並んで歩きながら、トラギコはこれから先のことについて話を始めた。

60 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:14:15.246 ID:Wo5nfMAQ0.net

「後でどのような処罰が下るかは分かりませんが、私は起きたことをそのまま市長と長官に報告します」

(,,゚Д゚)「あぁ、好きにしな」

そして、判決の時が訪れた。
関係者が全員再び法廷へと戻り、裁判長がゆっくりと席に着く。
彼の顔にはすでに疲労感が浮かんでいたが、一瞬だけトラギコに向けた視線に物ありげな色が宿っていた。
まるで、同情するような視線だった。

「それではこれより、被告人、ビンズ・アノールに判決を言い渡します」

誰もが口を噤んだ。
裁判で最も優先されるのは訴えた側の人間、つまり、ブルーハーツ児童養護施設の施設長及び職員の意志だ。
裁判で明らかにされた事件の全貌、犯人の認識などを踏まえ、彼らの要求する刑罰を法律の範囲内で尊重することになる。
未成年で強姦殺人をこれだけ行っていれば、法律の保護の範囲を越え、死刑もしくは執行猶予なしの終身刑となるはずだ。

前例はないが、ここまで事件が大きくなった以上、容易に甘い判決は下せないだろう。
それらの事も考えた上で、トラギコは裁判の一部始終を外部に向けて発信させていたのである。

「……被告人の行った犯罪行為は許されざるものがあり、また、同情の余地は一切ありません。
従って、原告の要望を全面的に受け入れ、言い渡します」

その時。
トラギコの背中に電流が走るような感覚が訪れた。
何かを見落としている。
何かを失念している。

死角にある何か、極めて重要な要素を。
有り得るはずがないと断じ、切り捨て、思考から無意識の内に弾いていた何か。
その感覚の答えは、裁判長の口から語られた言葉によって明らかにされた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

           「――被告人に、懲役三年の刑を言い渡します」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

判決を告げた裁判長の眼は静かだった。
判決を受けたビンズの眼は狂気の色に満ちていた。
判決を聞いたライトの眼は驚きに見開かれ、メイは呆然とした。
トラギコの眼は傍聴席に向けられ、そこに座る二人の権力者の表情を読み取った。

勝ち誇り、見下し、安堵していた。
あまりの衝撃に、傍聴席に座る人間も、裁判所の外にいる人間からも声は出なかった。
まるで時間が停止した様に、世界が静寂に包まれた。
最初に声を発したのは、トラギコだった。

(#゚Д゚)「ふざけんじゃねぇ!!」

その声は誰に向けたものなのか、トラギコ自身にも分からなかった。
立ち上がり、誰に向かって殴りかかるべきなのか、殴りかかろうとしたのかも分からない。
彼の思考は一瞬の内に激情で染め上げられ、理性的な言動は勿論だが感情を抑えることも出来なかった。
横にいたメイがトラギコの両肩を押さえなければ、裁判長に掴みかかって殴り倒していたかもしれない。

26 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:05:00.260 ID:vmNCFRd3a.net

しえすた

32 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:18:20.744 ID:0HXpnj9ha.net

支援

5 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:01:01.671 ID:Wo5nfMAQ0.net

(,,゚Д゚)「所長からの伝言だ!!証拠品を集めたら引き上げろとさ!!」

最後の死体が運び出され、トラギコ達が業者に現場を譲ったのはトラギコの言葉から三十分が経過した時だった。
トラギコは鑑識官の男達と同じバンに乗り込み、警察署へと向かう。
車内には運転手を含めて五人の男達が乗り合わせていた。

(,,゚Д゚)「証拠はどれだけ見つけられたラギ?」

質問に答えたのは、トラギコに毛髪を渡してくれた男だった。

( ”づ)「相当な数です。
    指紋、唾液、精液、そして毛髪。
    食堂にあったケーキの箱からも指紋が採取されていますが、現場で採取されたものとは後で照らしあわせることになります。
    ここまで集まれば特定は時間の問題です」

(,,゚Д゚)「よし、上出来だ」

( ”づ)「で、実際のところ所長は何て言ってきたんですか?」

(,,゚Д゚)「さっさと掃除屋に引き渡せってさ。
    三十分で引き渡せたんだ、十分ラギ」

すると、助手席から顔を覗かせて別の男が声をかけてきた。

「何で所長はこの事件に触れたがらないんでしょうね」

(,,゚Д゚)「俺もそれが気になってるんだが、まだ確信に至る材料が無いラギ。
    犯人を捕まえればそれも分かるだろうよ」

今度は運転席の男が口を開いた。

「噂になってますよ、トラギコさん。
次何かしたらクビになるって」

(,,゚Д゚)「その時はその時ラギ。
    だがその前にこの事件はきっちりとカタを付けてやるラギ」

「我々も協力しますよ」

(,,゚Д゚)「助かるラギ。
    俺には証拠品の分析や採取なんてのは出来ねぇラギ。
    お前達がいないと何も出来ねぇからな」

「はははっ、虎にそう言われると照れますね」

「トラギコさんがこの街に来るまで、俺達の仕事って言ったらあってないような物でしたから。
こうしてちゃんと事件解決につながる手伝いが出来るのは嬉しいことですよ」

と、別の席の男が同調する。
ジャーゲンの再犯率の高さと法律の無能さを目の前にしてしまえば、気持ちが萎えるのも分かる。
分かるが、それでは何も変わらないのだ。
無気力を環境のせいにするのはあまりにも容易であり、無責任だ。

少なくとも、警察官である以上は嘆いて足を止めてはならない。

(,,゚Д゚)「誰かがやらないんなら、自分がやればいいだけラギ。
    俺がここを離れても、そういう気持ちでやってれば犯罪に手を染める馬鹿は減っていくラギ。
    一朝一夕にはいかないものなんだよ」

58 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:12:44.737 ID:Wo5nfMAQ0.net

▼ ,’ 3 :『事件を担当しているのはあの馬鹿一人だ。
      あいつに何が出来る』

(‘A`)『あいつは、トラギコはちょっとやそっとじゃ諦めない』

▼ ,’ 3 :『別に諦めさせる必要はない。
      あいつがこの世から消えれば全て解決だ』

ドクオとサナエの会話が流れ終った時、一瞬の静寂が生まれた。
メイが目を大きく見開き、トラギコを見る。
その目が語る事は明らかだった。
だからトラギコは笑顔一つ浮かべずに言いきった。

(,,゚Д゚)「言っただろ、叩き潰すって」

爆発音と聞き間違うほどの怒号。
それは、法廷とその外から聞こえてきた。
窓ガラスが振動で震え、裁判長の木槌の音さえも掻き消した。
裁判長が流石に冷静さを欠いて取り乱す。

法廷内だけならばまだしも、このタイミングで外からの怒号が聞こえるとは思いもしなかっただろう。
アサピーがトラギコと目を合わせ、頷いた。
彼は携帯電話を使い、法廷内の全ての会話を外に向けて流していたのである。
そして、その会話を流した先はラジオ局。

ジャーゲンでニュースを取り扱う局にアサピーが独占放送と言う形で裁判内容を垂れ流しにし、そのラジオの音声は外で待機している人間の耳に届いた。
これで事件をもみ消すことは一切不可能となり、後は裁判の行方次第となる。
だが、そのことに気付いている人間はほんのわずかしかいない。
この法廷で気付いているのはトラギコ、アサピー、そしてセントジョーンズだけだった。

「これより三十分の休憩とし、その後、判決を言い渡します!!」

裁判長の大声によって、喧々囂々した法廷が一時的に落ち着きを取り戻す。

「トラギコ、話をしますよ」

鬼の形相を浮かべたメイがトラギコの肩を強く掴み、有無を言わさぬまま控室へと連れて行った。
法廷のすぐそばに作られた狭い控室に入ると、メイは鬼気迫る表情で問いただした。

「貴方は何がしたいんですか」

(,,゚Д゚)「この街の癌を一掃するんだよ。
    証拠は揃ったラギ。
    あの屑とその両親に然るべき罰を与えて、ムショにぶち込む」

「街の政治には干渉しない、これは警察官の基本のはずです」

(,,゚Д゚)「政治じゃねぇよ。
    あいつらが作った法律に反している罪人がいるんなら、それを捕まえるのが俺の仕事ラギ」

「……これ以上、事態をややこしくしないでください」

(,,゚Д゚)「俺がややこしくしてるんじゃねぇ。
    元が糞みたいな事件なんだ」

「他に何か公開しようとしていることは?」

(,,゚Д゚)「何もねぇよ。
    俺はやることをやっただけだ」

42 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:39:56.204 ID:vmNCFRd3a.net

23 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:57:52.852 ID:z09ysCSs0.net

リアルタイムは初めてだ
しえん

68 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:39:18.032 ID:Wo5nfMAQ0.net

支援ありがとうございました

これにて第三章はお終いです
次回の終章で、この物語は終わりとなります

質問、指摘、感想などあれば幸いです

12 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:31:29.193 ID:Wo5nfMAQ0.net

(-@∀@)「相手は未成年で、似たような前科がある、と言ったら?」

(,,゚Д゚)「そこまでは俺も考えたラギ。
    問題は、そいつの名前も顔も分からない事ラギ」

(-@∀@)「あたしは別でさぁ。
     何せ、そいつの裁判を傍聴してたんだ。
     そしてそいつは、すでに釈放されているんでさ」

(,,゚Д゚)「そいつの判決が出たのは七月二十日で、まだ刑務所の中のはずラギ。
    どういうことラギ」

(-@∀@)「えぇ、半年間の判決が出ましたが、実際にもう娑婆に出てるんでさぁ。
     これまでに何度か取材をしようと刑務所に行きましたが、そいつはいなかった。
     看守はシラを切っていましたが、他の受刑者から聞きました。
     刑事さん、間違いありません」

子供を相手にした強姦殺人事件は、この街に来る前から知っていた。
そしてその犯人が捕まり、半年間刑務所に送られていることも聞かされていた。
二つの事件には共通点が多々あり、真っ先に疑ってかかっていたが、資料を確認したら今も刑務所の中にいる事になっており、事件を起こすのは不可能であると判断して除外していた存在だ。
この事件こそが、トラギコの中にある心当たりだった。

しかし、アサピーもトラギコもその犯人に注目をしていた。
外に出ているはずのない犯罪者に。

(-@∀@)「あたしが追えるのは途中までなんでさ。
     だから、あんたさんと手を組めばこいつを追いかけられる。
     どうです?悪い話じゃないでしょう」

(,,゚Д゚)「何でこの事件に関わろうと思ったラギ?」

(-@∀@)「あたしはジャーナリストですよ?真実を大衆に伝える義務ってのがあるんでさぁ」

(,,゚Д゚)「初めて聞いたな、そんな話」

(-@∀@)「まぁそこはいいじゃありませんか。
     で、どうしやす?」

(,,゚Д゚)「いいだろう。
    ただし条件があるラギ」

(-@∀@)「なんですかい」

(,,゚Д゚)「俺の邪魔をするなよ」

(-@∀@)「へへっ、分かってますよ。
     殴られるのも撃たれるのも御免なんで」

アサピーが左手を差し出してきた。
それを一瞥して、トラギコも左手で握手に応じた。

(-@∀@)「じゃあ、また」

左手を素早く上着のポケットに入れ、アサピーから密かに渡された紙をそこにしまった。
他の警官達に聞かれなくない情報がそこにあると考え、少し離れた場所で見ることにした。

紙には電話番号と共に、一枚のスケッチが描かれていた。
それは法廷に立つ一人の男を描いたものだった。

(,,゚Д゚)「……こいつか」

62 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:18:48.001 ID:hh2AZhgUa.net

しえん

15 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:44:47.803 ID:Wo5nfMAQ0.net

「……おい、今、何て言ったんだ?」

それは、店の隅に座っていた男の口から発せられた一言だった。
客達が一斉に男に目を向ける。
無精ひげを生やした長髪の偉丈夫は、信じられない物を見るかのような目で、トラギコを見ていた。

(,,゚Д゚)「ブルーハーツ児童養護施設で起きた強姦殺人事件の犯人を捜している、と言ったんだ」

「嘘だろ……おい!!」

どうやらトラギコの行動よりも、施設の名前に驚いているようだった。

「俺の……俺の腹違いの弟がそこにいるんだ、ああ……じ、ジョシュアって名前の……!!
ジョシュアは無事なのか?!」

(,,゚Д゚)「……残念だが、男児は全員殺されたラギ。
    女児も全員凌辱され、生き残ったのは三人だけラギ」

男は口を押えながら、声を上げて泣き出した。
その姿を見て、数人の客の間にも動揺が走った。
恐らく、児童養護施設の出身者か関係者なのであろう。

(,,゚Д゚)「俺はお前らに喧嘩を売りに来たんじゃないラギ。
    この事件を起こした異常者についての情報を聞きに来たんだ」

「あんた、やっぱり警官だったのか」

非難するような口調で投げかけられたのは、派手な化粧をした女の言葉だった。
女の態度から察するに、前にトラギコが逮捕した人間なのだろう。

(,,゚Д゚)「だったらどうした。
    警察に協力するのはお前らの流儀に反するってか?」

「ならここじゃなくて、どこかの興信所にでも行きなよ。
ここはね、あんたみたいな人間が来るところじゃないんだよ」

(,,゚Д゚)「あぁ、出来れば俺だってこんなところに来たくはねぇラギ。
    だけどな、この糞野郎を捕まえる為なら俺はどんなところにでも喜んで行くラギ」

「はっ!あたし達を捕まえておいて、あんたが困った時に手を貸せってのかよ!」

(,,゚Д゚)「威勢がいいな、女。
    その通りだよ。だからどうした。
    俺が警官でお前らがならず者だろうが、何の罪もない子供を凌辱して殺した奴を見逃していい理由になるのかよ。
    冗談じゃねぇラギ!!」

トラギコの怒鳴り声に、誰もが再び沈黙した。
先ほどまでトラギコに食って掛かろうとしていた女も口を噤み、恐怖に目を見開いていた。

(,,゚Д゚)「別に正義の味方になろう、って言ってるわけじゃねぇラギ。
    お前らの中に俺が捕まえた奴がいるんなら、それはそいつが罪を犯したから俺がそうしただけラギ。
    だから今度も同じラギ。
    罪を犯した奴がいるから、俺が捕まえるラギ。

    お前らは平気なのかよ、年端もいかない子供がこんな目に遭って、またそれが繰り返されるかもしれないって言うのを黙っていられるのかよ。
    お前らの嫌いだった大人ってやつは、そういう連中だったんじゃねぇのかよ」

誰も何も言えなかった。
トラギコの言葉に感動したからでもなく、何を言えばいいのか分からないのだ。
そして、何をすればいいのかも。

69 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:40:54.548 ID:hh2AZhgUa.net

おつ

7 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:05:37.848 ID:Wo5nfMAQ0.net

病室に移されるまでは出来ることはあまりないが、こうして病院で待っていれば、口封じに来た人間を捕えることが出来るかもしれない。
携帯電話に着信があり、トラギコは一度裏口から外に出て、電話に応じた。

(,,゚Д゚)「はい」

▼ ,’ 3 :『今どこにいる』

電話の主はやはり名乗らなかったが、その声がサナエであることは明らかだった。
苛立ち、今にも爆発しそうな声色だったが、トラギコは無視をすることにした。

(,,゚Д゚)「病院ラギ」

▼ ,’ 3 :『掃除屋を撃ったのは事実か?』

(,,゚Д゚)「えぇ、捜査の邪魔をしてきたんでね。
    最初に言っておきますが、法律上、何も問題はありませんラギ」

▼ ,’ 3 :『……そのことについて、お前に取材をしたいと言ってきている人間がいるんだが。
     それについて、何かあるか?』

(,,゚Д゚)「別に、何も」

▼ ,’ 3 :『いいか、法律上問題が無くても世間がどう見るかは別だ。
      取材に応じ、イメージダウンが無いように答えろ』

本来であれば断りたいところであろうが、そうしないということは何か理由があるに違いない。
トラギコが取材に応じて何が起きるのか、それを想像できない程まだサナエは耄碌していないはずだ。
それでも応じるという事は、取材を申し出た人間が何かしらの力を持っていると考えるべきだろう。

(,,゚Д゚)「ただ、俺は病院からしばらく動くつもりはありませんラギ。
    取材をしたいと言っている奴をこっちに寄越してください」

▼ ,’ 3 :『いいだろう。
      くれぐれも余計なことをするなよ』

(,,゚Д゚)「善処しますラギ。
    で、相手の名前は?」

▼ ,’ 3 :『……アサピー・ホステイジだ』

その名前を聞いて、トラギコはサナエが何故取材に応じるように言ってきたのか理解出来た。
アサピー・ホステイジはフリーのジャーナリストで、世界各地に飛び回ってはスクープを探し出す、いわばイナゴのような男だ。
この男とトラギコは一度だけ面識があるが、それは警察がマークしていた容疑者を聞きつけたアサピーが余計な行動を起こして容疑者を逃し、激怒したトラギコが彼を拘束した時だった。
曰く、容疑者であってもアサピーには取材をする権利がある、との事だったがその言葉はトラギコの拳で最後まで紡がれることはなかった。

取り逃がした容疑者は捕まえたが、その間に起きた事件の被害者については、アサピーが何か言及することはなかった。
後日、彼は警官に不当監禁されたと新聞に記事を載せ、更には損害賠償を請求した挙句自伝まで発刊したことがある。
彼はマスコミ業界全体に大きなコネを持ち、電話一つでラジオに出演することも出来る程の男だ。
結果、アサピーはジュスティアに立ち入ることを永久に禁止され、警察全体からも敵視されていた。

以降、アサピーは警察に対して否定的な記事を取り上げるようになり、警察のイメージダウンに注力するようになった。
今回彼の取材を受け入れたのは、ジャーゲン警察について根も葉もない記事を書かれるぐらいならせめてトラギコ一人の責任問題にしてしまえばいいという、リスク管理の問題だった。

(,,゚Д゚)「分かりました。
    では場所を伝えておいてくださいラギ」

電話を切って、空を見上げた。
空を覆う灰色の雲の向こうにうっすらと青空が見える。
小さな雪が静かに降り、雲がゆっくりと流れていく。
当然のことだが、大勢の子供が凌辱されて殺されても、空は何も変わらない。

52 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:00:42.538 ID:hh2AZhgUa.net

しえん

55 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:06:22.879 ID:vmNCFRd3a.net

しえん

14 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:41:33.933 ID:vmNCFRd3a.net

支援

4 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:00:39.824 ID:Wo5nfMAQ0.net

どうにも威勢がいい男だ。
何かそれなりの後ろ盾があるのだろうか。

(,,゚Д゚)「俺は優しいからもう一度だけ言ってやるラギ。
    邪魔をするな」

「ははっ、俺にはジャーナリストのダチがいるんだ。
手を出してみろ、すぐにお前の記事を書かせてクビにさせてやるよ。
あぁそれと、俺は寛容だからもう一度だけ言ってやるよ、おまわりさん。
邪魔するな」

威勢の良さの理由が分かったところで、トラギコは安心して銃爪を引いた。
男の膝に穴が開いた。
そして跪き、足を押さえてうずくまる。
凍り付く様な早朝の街に、男の悲鳴と銃声が木霊した。

「あはぁっ!?」

(,,゚Д゚)「ジャーナリストのダチはどこに行ったラギ?あぁ?ほら、遠慮しなくていいから呼べよ」

ジュスティアが契約際に提示している法律の基本セットにおいて、警察官の捜査妨害をした際、警告に従わなかった場合は武力による鎮圧が許可されている。
これはよほどのことが無い限り法改正がされない部分であり、トラギコが多用する法律の抜け道の一つだった。
ジャーゲンでは勿論、この部分は手を加えられていない。

(,,゚Д゚)「今の内に証拠品を集められるだけ集めておけラギ」

「は、はいっ!」

警官達は施設へと戻り、死体の搬出と現場検証を再開した。
残ったトラギコと清掃業者たちは対峙し、一言も発さない状態が続いた。
彼らが待っているのは別の存在がこの状況を変化させることだった。
その存在とは、警察上層部からの撤退指示だ。

所長の命令が現場に届けば、その時になって初めてトラギコ達は引き上げることになる。
しかし、その命令が届いていない以上、規定通りに捜査を続行することが出来る。
トラギコの携帯電話が振動したのは、それから数分後の出来事だった。

(,,゚Д゚)「はい」

▼ ,’ 3 :『掃除屋がそっちに行っているだろう』

相手の名前を聞くまでもない。
サナエだ。

(,,゚Д゚)「えぇ、来てますよ」

▼ ,’ 3 :『掃除をさせろ。
      これは施設からの依頼だ』

(,,゚Д゚)「分かりました。
    では我々が現場から引き上げてから、彼らに施設を任せることにしますラギ」

▼ ,’ 3 :『今すぐに、明け渡せ。
      いいか、私の命令を無視すればどうなるか想像できないわけでもあるまい』

(,,゚Д゚)「あぁ、簡単に想像できるラギ。
    あんたが顔を真っ赤にして本部に電話する姿ぐらいな」

一方的に電話を切って、トラギコは施設の中に向けて大声で叫んだ。

54 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:05:23.647 ID:Wo5nfMAQ0.net

(,,゚Д゚)「あぁ、あるさ」

法廷が静まり返る。

(,,゚Д゚)「逮捕時、薬物反応が出ているのは当然ラギ。
    さっきも言ったように、こいつは九時半前後に薬を摂取している。
    目撃情報もあるラギ。
    だけどな、犯行時に薬の影響はなかったんだよ」

トラギコはクリップで止められた書類と、密閉袋を取り出した。
この二つの証拠品が、ビンズたちを重罪人として処理するための、ビロードとイトーイが残した切り札。

(,,゚Д゚)「ブルーハーツ児童養護施設で犯行が行われた際、抵抗した少年がいたんだ。
    その時、少年は犯人の毛髪を掴んでいたラギ。
    毛髪には薬物反応はなかったラギ。
    体液については全部燃やされた上に盗まれちまったから何とも言えねぇが、髪の毛は正直に語ってくれたぞ」

イトーイが手に入れた毛髪。
トラギコはそこに薬物の痕跡がないかを確認する為、鑑識課に依頼をしていた。
犯人に入れ知恵をする者が背後にいると分かった段階で、これほど大量の証拠が残され、逮捕される事を考えたら責任能力の有無を狙ってくると考えた。
トラギコが密かに依頼していた検査結果をビロードは守り抜き、こうしてこの場に繋いだのである。

ビロードが殺された時、彼を殺した人間は検査結果を奪い、処分することを依頼されていたのだろう。
だが、トラギコも検査を依頼していたとは知らなかったのだろう。
検査結果は二つ存在し、ビロードが先に受け取っていた結果が最も重要なものだと知っていたのは殺されたハシュマルとトラギコだけだ。
何も知らない犯人はドクオが依頼した体液に関する情報を盗み、処分した。

もしもドクオとトラギコがほぼ同時に遺伝子検査の依頼をしていなければ、この結果は得られなかった。

(,,゚Д゚)「最低でも三年は薬物の反応がない。
    ってことは、こいつには責任能力があったわけラギ」

(;`・_ゝ・´)「そ、そんな……!!」

ライトが大きく動揺する。
彼にとっての切り札は、トラギコが用意した切り札に負けたのだ。
トラギコが欲しかったのは、相手がここぞとばかりに薬物による責任能力の低さを口にする瞬間だった。
その瞬間を正面から退ければ、相手の悪質さがより印象付けられる。

ビンズの顔から笑みが消え、明らかに動揺していた。
これまでの人生、彼は常に誰かに守られ、保護され続けてきた。
その保護が遂に無効となる日が来たのだ。
親の権力、そして異常者という保護。

守りを失った愚者は、何もすることはできない。
抗う事も知らずに生きてきた男は、ここで、己の罪の重さを知ることになるのだ。

(;`・_ゝ・´)「い、異議あり!」

「弁護側の異議を却下します。
検察側、続けてください」

トラギコは裁判長の方を見て、核心部分について一気に話を進めることにした。
この場で話に決着をつける。
明日まで裁判を伸ばせば、また新たな人間と証拠が消されてしまう。

(,,゚Д゚)「この証拠品は事件当日、勇敢な少年が果敢に抵抗して手に入れたものラギ。
    そして昨日、ある警官が証拠隠滅を図る暴漢から検査結果を死守したラギ。
    だが代わりに、別の検査結果が失われたラギ。
    ドクオ・マーシィが依頼をしていた、DNAによる親子関係の検査結果ラギ」

21 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:51:52.128 ID:Wo5nfMAQ0.net

それに、二人でいれば多少は命を狙われるリスクが減る。
出来るのであれば、犯人はトラギコが確保したいところであった。

(,,゚Д゚)「じゃあ、行くぞ。
    何かあれば電話をするラギ」

そしてトラギコはプレハブ小屋に入り、警察の身分証明を見せ、フェンスの内側に入れるように命令をした。
警察が普段は近寄らない場所ではあるが、契約ではこの場所も警察が治安維持をすることになっている。
プレハブ小屋の中で酒盛りをしていた男達は一瞬だけ面食らった様子だったが、トラギコの眼に気圧されて、大人しく扉を開いた。
三人は堂々と正面から入り、コンテナが高く積み上げられた埠頭へと足を踏み入れた。

鋼鉄の塊がまるで大樹のように聳え立ち、ひっきりなしに金属同士がぶつかる重々しい音が響いてくる。
大型の輸送船が接岸し、大型クレーンが巨大なコンテナを持ち上げて新たなコンテナの木を作っていた。
まず、トラギコは二人に話していない事があった。
犯人が目撃された時、トリックスター運輸の制服を着ていたという点だ。

これは先入観を持たずに捜査をさせる為であり、余計な情報で犯人を見逃してもらいたくないという考えからだった。
しかし、トラギコは先にトリックスター運輸に向かう事にしていた。
このコンテナ林を使う会社は無数にあり、作業員のために作られた簡易的な支所がいくつもある。
情報を集めるのであれば、まずは所属をしていた会社に足を運ぶのが定石だ。

足元から、まだ新しい雪を踏む音が小さく鳴る。
その音に金属の重低音と波の音が重なる。

「兄さん、どうだい?」

横から声をかけられ、足を止めずに目を向ける。
街灯の下に白い息を吐く男が立っていた。
薬物の売人か売春斡旋人である可能性しか考えられず、無視をしようかと思ったが、トリックスター運輸の場所を聞き出すのに都合がいいことに気付いた。

(,,゚Д゚)「あぁ、ちょっと頼みたいことがあるラギ」

「へへっ、そうこなくっちゃ」

(,,゚Д゚)「こっちに来てくれラギ」

懐に手を入れ、密かに財布を出すような仕草をする。

「大丈夫だって、ここにサツはこねぇからよ」

男は堂々と白い粉の入った袋を上着から取り出し、トラギコにそれを見せた。
無知は人を恐ろしいほどの馬鹿に仕立て上げる時があるが、この男のタイミングの悪さは抜群だった。

(,,゚Д゚)「あんたの後ろに誰か人がいたら怖いからな。
    こっちに来てくれよ」

実際、薬物の取引を装った路上強盗事件はよく起こる。
路地裏や人目に付かない場所に誘導し、そこで金品を奪い取るという手法だ。
売春でも同じような手口を使い、下心を出した男から金を巻き上げるという事件は後を絶たない。

「ちぇっ、分かったよ。
用心深い兄さんだ」

男はニヤニヤ笑いを浮かべながらも周囲を見回し、それからトラギコのように歩み寄ってきた。

「百五十ドルだ。
まじりっけなしの極上の品だぜ」

(,,゚Д゚)「確かに、純度が高そうラギ。
    輸入したばっかりのやつか?」

59 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:13:49.024 ID:vmNCFRd3a.net

支援

22 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:54:49.311 ID:Wo5nfMAQ0.net

「よく知ってるね。
そうさ、だからどこかのケチな奴らと違って、変な粉を入れて量を誤魔化すこともしちゃいねぇ。
百パーセントピュアな粉だ」

(,,゚Д゚)「なるほどな。なら――」

懐から拳銃を取り出し、銃腔を男に向ける。

(,,゚Д゚)「――この場で現行犯逮捕すれば、色々と面白くなりそうラギ」

「なっ、ちょっ!?」

(,,゚Д゚)「黙れ。 まず、お前が持っている粉を全てこの場に捨てろラギ」

「ど、どういう……」

(,,゚Д゚)「袋を開けて、中の粉を全部雪の上に捨てろってことラギ。
    これ以上の説明はしないラギ。
    お前が質問を一つするごとに、俺はお前の指を折るラギ。
    俺に同じことを言わせたら、鉛弾を一発くれてやるラギ」

男は怯えながら、トラギコの指示通りに袋を破いて粉を捨てた。
二十袋以上破いて捨てても、トラギコは銃腔を男から逸らさなかった。
男は靴の中から更に六袋取り出して、中身を捨てた。

(,,゚Д゚)「次だ。
    トリックスター運輸の建物まで案内しろラギ」

「なっ、なな、何で」

トラギコの手の中で、撃鉄を起こす音が不気味に鳴った。

「もも、勿論!」

男を先に歩かせ、その後ろを付いていく。
何度かコンテナの間を通りながら進み、三階建ての建物の前で男が止まった。
コンクリートで作られた飾り気のない四角い建物にはカーテンも付いていない四角い窓があり、人が動いている様子がよく見えた。

「こ、ここです」

(,,゚Д゚)「ご苦労。
    二度と薬を売るな、いいな。
    次に見つけた時は生きたまま海に沈めるラギ」

「はひぃっ!」

小さく悲鳴を上げ、逃げるようにして男はコンテナ林の中に消えて行った。
残されたトラギコは建物を見上げ、まだ中に人がいることを確認してから中に入った。
一階には受付すらなく、まるで倉庫のように多くの荷物が雑然と積み重ねられ、散らばっていた。
その中で、緑色の制服を着た男達が荷物を右から左へ動かしている。

天井にぶら下がっているスピーカーからはラジオが流れていた。

(,,゚Д゚)「責任者はいるか?」

トラギコの突然の問いかけに、制服を着た男の一人が動きを止める。
運送業をしているだけあり、その体躯はしっかりとしている。
腕はまるで丸太のように太かった。

「何の用だい?」

2 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 18:54:05.504 ID:Wo5nfMAQ0.net

‥…━━ Part2 ━━…‥

‥…━━ 十二月十三日 早朝 ブルーハーツ児童養護施設 ━━…‥

通報を聞き、警察車両とトラギコ・マウンテンライトが現場に到着したのは明け方四時の事だった。
救急車に続々と人が乗せられ、運ばれていく。
昨日トラギコが不審者や不審物に気を付けるように言ったばかりの場所だっただけに、彼は行き場のない憤りを胸に抱いた。
建物に入ると、まだ一階から子供たちの死体を運び出している状況だった。

生存者はすでに病院に運ばれ、この建物に残っているのはすでに事切れている子供だけだった。
生存者は僅か三名。
全員が性器に重度の傷を負わされ、瀕死の状態だった。
残った死体も一目でそれと分かる性的な暴行を受け、殺されていた。

ただし、性的暴行を受けたのは全て女児で、男児が性的暴行を受けた痕はなかった。
男児は皆ベッドの上で絶命しており、詳細はまだ分からないが、毒が使用されたようだった。
三階に上がると、廊下に見知った顔の子供が倒れていた。
イトーイだった。

一目で首が折られて絶命しているのが分かった。
彼だけが唯一の例外であり、間違いなく犯人と対峙したことが分かる。
見開かれた虚ろな瞳がトラギコを見つめていた。

(,,゚Д゚)「……イトーイ」

死体のそばに屈んで、小さく名前を呟いた。
返事など、当然ない。
子供が大人に勝てるはずがないのに、イトーイは立ち向かったのだ。
恐ろしかっただろう。

痛かっただろう。
悔しかっただろう。
抵抗しなければ、彼は生きていられたはずだ。
しかし、現場に落ちているバットや状況を見れば分かる通り、彼は隣の部屋にいた女児たちを救おうとしたのだ。

ジュスティアにもこれほど勇敢な警官はそういない。
生きていれば優秀な警官として、大勢の人間を救ったことだろう。
ふと、イトーイの潰された手に目が行き、そこで止まった。

(,,゚Д゚)「これは……!!」

彼の手には人の毛髪が何本も絡みついていた。
この状況で言えることは、この毛が犯人の物である可能性が極めて高く、今ここで採取するのが正解だと判断した。

(,,゚Д゚)「鑑識!!すぐに来てくれ!!」

切羽詰った様子のトラギコの叫びに、鑑識官が階段を駆け上ってきた。
以前から何度も顔を合わせているため、すっかり馴染となった男だ。
現場を調べることに関しての腕は確かで、彼ならば安心して証拠品を任せられる。

( ”づ)「どうしたんですか?」

(,,゚Д゚)「この小僧の手にある毛髪を採取しろ、今すぐに」

言われた通り、鑑識官はピンセットで毛髪を採取し、一本残らず袋に詰める。
しっかりと袋の封を締め、採取日時と場所を書いた。

(,,゚Д゚)「俺の予想だと、もうそろそろ連絡が来るはずラギ」

48 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:50:16.359 ID:Wo5nfMAQ0.net

( ><)「どうして警官になろうと?」

( ”づ)「真面目に答えたほうがいいのか、それとも少しふざけてもいいのかによるな」

( ><)「真面目にお答えいただけると嬉しいです」

ビロードの眼はまっすぐにハシュマルを見ていた。

( ”づ)「昔、鑑識官が主役のラジオドラマがあってな。
    それの影響だよ」

( ><)「後悔とか、していないんですか?」

( ”づ)「後悔していることがあるとしたら、もっと早くに気持ちの切り替えをしておけばよかった、ってことだよ」

誰かが状況を変えるのを待つのではなく、自ら変えていく事をしていれば街は変わっていたのかもしれない。
少なくともトラギコにはそれができた。
歳は一歳しか違わないのに、彼はまるで十年以上も先に生きているような働きぶりをしている。
嫌でも憧れてしまう。

同じ警察官として、あそこまでまっすぐに走り続けられるのは。

( ”づ)「ま、それでもこの仕事を続けていてよかったと思う事はあるさ」

DATによる遺伝子解析状況が残り二割となった。

( ”づ)「犯人が捕まった時もそうだが、誰かの無実が明らかになった時も嬉しいものさ。
    ビロード、お前はまだ若いんだ、色々試してみればいいさ」

( ><)「はい……それで僕、考えていることがあって」

( ”づ)「ほぅ、何だよ?」

( ><)「トラギコさんって、いつも一人ですよね」

( ”づ)「俺が聞いている限り、相棒はいないらしい。
    と言うより、長持ちしないから結果的に一人でいるって聞いたな。
    何だ、あの人の相棒でも目指すのか?」

( ><)「はい、調べたらそういう制度があるみたいなので……」

ジュスティアの派遣警官には数種類の形態があり、ジャーゲンやヴェガで適応されているのは常駐型の警官。
他には、解決困難な事件が発生した際に単独、もしくはチームで派遣される形態がある。
一か所に停滞することが難しいトラギコであれば、後者の形態で派遣された方が確かに力を発揮できそうだ。

( ”づ)「あいつがそれをするかどうかは別物だし、何より上が許可するかが問題だな」

着眼点は極めていい。
しかし、彼を取り巻く環境が問題なのだ。
本部には、トラギコのような人間は確かに必要であるという考えを持つ人間もいるが、それを快く思わない人間の方が多い。

( ”づ)「そう言えば、各地方に本部を設置するって話が本格化するらしい」

昨今の地方犯罪への対処が遅れるとの事から、以前から実験的に進めていた地方本部という概念があった。
特に、金の羊事件によって警官隊の到着時間短縮が再度見直されることとなり、
契約関係にある全ての場所に三十分以内の到着が重要であると強く印象付け、世界中に拠点を配置することが決定された。
その拠点への配属を希望する人間は能力検査を経て、上司の推薦状と共に転属が決定する。

( ”づ)「今回の事件が落ち着けば、二人ともどこかの地方本部に行けるかもな。
    勿論、お前の言ってる形態もありだけどよ」

56 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:07:46.490 ID:Wo5nfMAQ0.net

自分の言葉が十分に相手の耳に届き、浸透した頃合いを見計らって、トラギコは続けた。

(,,゚Д゚)「しかし、俺が依頼していた検査は二種類あったラギ。
    一種類は薬物の残留。
    そしてもう一つは、親子関係の検査ラギ。
    その結果、面白いことがここに書いてあるラギ」

手にした紙の束をライトに見せつけ、そして、自らの目線は傍聴席に向けられた。
虎の一睨。
誰もがトラギコの次の一言に耳を傾け、固唾を飲んだ。

(,,゚Д゚)「DNA検査の結果、ビンズ・アノールはサナエ・ストロガノフとジョセフ・アルジェント・リンクスの実子である、ってな」

悲鳴にも似たどよめきが起きた。
傍聴席にいた二人の顔は蒼白となり、震え、歯を食いしばっている。
その様子をすかさずアサピーが絵に収めた。
最早、二人に逃げ場はない。

決して逃げようのない場所に二人が現れ、大勢の人間に真実を聞かせることによって、逃げ道を失くしたのだ。

(,,゚Д゚)「ビンズ・アノールは前回、同様の事件を起こした際にその名前を変えたラギ。
    だが、その時の名前もすでに変わった後の名前だった。
    こいつは最低でも二回は同じように女児を凌辱して殺している」

(`・_ゝ・´)「どうして最低でも二回と言いきれるのですか?」

ライトの言葉はまるで、トラギコにさらなる情報を開示するように促しているように聞こえた。

(,,゚Д゚)「この街の法律が変わり、未成年が起こした事件に関してのデータを処分されるようになったのは十年前。
    そこに座っている男が最初に起こした事件が、ちょうどその時期に被るんだよ」

遂にビンズは耳を塞ぎ、目を瞑って俯いた。

(;`・_ゝ・´)「異議あり!全て憶測で、出鱈目だ!」

「弁護側の異議を認めます。
検察側、その証拠を提示してください」

(,,゚Д゚)「話を戻すが、そこの屑は言うまでもなく市長と所長の子供ラギ。
    だが、二人にとってそいつは余計な存在だった。
    だから捨てた。
    児童養護施設に引き取られ、ある時そいつはそこで問題を起こしたラギ。

    同じ施設の女児に手を出した。
    そのことは当時の日誌に書かれているラギ」

掲げて見せたそれは、昨日訪れたブルーハーツ児童養護施設でトラギコが見つけた日誌のコピーだった。
色褪せた日誌には、クリントという名の男児が女児の下半身を舐め、触り、暴力を振るったことが克明に書かれていた。

(;`・_ゝ・´)「異議あり!その男児と被告人が同一人物であるという証拠は――」

45 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:48:26.092 ID:Wo5nfMAQ0.net

背中に冷たいものが走った。
ドクオは最後の詰めで失敗を犯した。
警察署内は相手の本拠地であり、何一つ用心していないまま伝達した情報は相手に筒抜けになっていると考えなければならない。

(,,゚Д゚)「何時からその検査をさせてるんだ?」

(‘A`)「裁判が終わってからだから、十一時ぐらいからだ。
   正午までには結果が出る」

トラギコはドクオを押しのけ、扉に手をかけた。

(;’A`)「どうしたんだ?」

(,,゚Д゚)「お前のやってきたことについては、ある程度は目を瞑ってやるラギ。
   だけどな、ビロードを巻き込んだことについては褒められねぇな。
   あいつはお前が何をしてきたのか知らないんだろ」

(;’A`)「……あぁ」

(,,゚Д゚)「二度とこんなことをさせるな。
   あいつは真っ当な道を歩かせろ。
   俺達とは違う、後ろ指さされない道を」

ドクオを残し、トラギコは保管庫を出て急いで鑑識課の元へと向かった。

‥…━━ 十二月十五日 午前 ジャーゲン警察 鑑識課 ━━…‥

ハシュマル・ディートリッヒはジャーゲンで勤務する鑑識官の中で、最も勤続年数が多く、そして経験の多いベテランだった。
夏に三十歳の誕生日を一人で迎えるまでは、何事もなく警察の仕事を全うし、次の転属の知らせを待つ日々を過ごしていた。
全てを変えたのはトラギコ・マウンテンライトの転属だった。
彼が来てから警察が変わり、街が変わった。

彼によって街中に蔓延っていた小悪党たちは悉く逮捕され、未成年による犯罪件数は劇的に減少した。
誕生日を迎えた日、ハシュマルの気持ちは清々しいものになっていた。
事件が起きてからしか動く事の出来ないハシュマルにとって、トラギコの登場も嬉しい知らせだったが、ビロード・フラナガンの転属も喜ばしいものだった。
最近連続で難事件を担当し、解決している若い警官というのは、この世界にまだ正義があることを再認識させてくれる存在であり、ベテラン勢が引退してからも安心出来る材料だった。

鑑識課に割り当てられている部屋には検査用の道具も然ることながら、極めて高価なDATが置かれており、遺伝子検査や細かな毒素の検査などに用いられている。
一時期はトラギコが逮捕した犯罪者たちの検査で連日フル稼働だったが、今では大分落ち着き、二件の検査結果を待つだけになっている。
その内の一つはすでに結果が出ており、別件で結果を取りに来たビロードに手渡した。
折りたたまれた紙を制服の懐に入れて、ビロードは確かめるようにして懐を叩いた。

( ”づ)「じゃあ、そいつを頼むぞ」

( ><)「分かりました。
      ドクオさんのはどれくらいで出来ますか?」

( ”づ)「もうすぐ出来る。
     コーヒーでも飲んで待ってな」

DATに取り込まれた遺伝子情報の分析結果が出るまで、彼にできることは何もない。
椅子に背中を預け、大きく蹴伸びをした。
事件の数が減った事で、彼が着ている白衣は二ヵ月ぶりにクリーニングに出すことができ、先日戻って来たばかりだった。
白衣から漂う洗剤の淡い香りが眠気を誘った。

( ><)「分かりました。
     ハシュマルさん、聞いてもいいですか?」

( ”づ)「俺に答えられる範囲でならな」

70 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:43:38.841 ID:z09ysCSs0.net

おつ
ビロード…

8 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:07:35.982 ID:Wo5nfMAQ0.net

しかし、感傷的になっても今は仕方がないとトラギコは思った。

( ><)「トラギコさん、大丈夫ですか?」

振り返るとそこには茶封筒を手に佇むビロードがいた。

(,,゚Д゚)「おう、どうした?」

( ><)「鑑識からトラギコさんに検査結果が出たから持って行くように、と言われて」

茶封筒を受け取り、中の書類に目を通した。
それは死体の残留物から確認された薬物についての調査書だった。
そこには、男児と女児で使用された薬物が異なることが記されていた。
男児には遅行性の猛毒が使用され、女児には強力な睡眠薬の一種が使われたことが書かれていた。

いずれも胃の中にあったケーキから毒が確認され、事件のあった夜に出されたデザートが原因であることが分かった。
施設関係者によると、子供たちへの寄付として送られてきたケーキに、男女で別の物を提供するようにとの添え書きがあったという。
そしてイトーイだけが、己のケーキを食べずに別の子供に渡したという供述が添付されていた。
別の書類には、現場で見つかった指紋と以前に手に入れた指紋が一致したとの旨も書かれていた。

早速鑑識課の人間達が調べてくれたのだと思うと、彼らに頭が上がらない思いだ。
すると疑問になるのが、職員たちは何故あれだけの事が起きていたのに誰も起き上がって対処しなかったのか、ということになる。
その疑問に答えたのは、ビロードだった。

( ><)「事件当日、施設関係者は皆ケーキと共に送られてきた酒を飲んだとの事です。
     どうやら女児に使われた毒と同じものが盛られていたようです」

(,,゚Д゚)「今回は計画的、ってことラギ。
    毒の出所は?」

( ><)「今調査中です。
     配達業者と依頼人についても調査して、箱に残っていた指紋を調べるそうです」

ここまで証拠が出そろえば後は時間次第だが、相手が未成年だった場合にどうするかが問題だった。
未成年の犯罪者は記録が残されず、指紋などの情報は全て処分されている。
その点について、トラギコは別の側面から考えることにしていた。
未成年者の情報はなくとも、犯罪の情報は残っている。

丁度アサピーという打ってつけの情報収集専門家がトラギコの前に来ることも有り、それを利用しない手はなかった。
一件だけ、トラギコは犯人に繋がりそうな事件に心当たりがあったのだ。

(,,゚Д゚)「署の方で何か変わった動きはあるラギか?」

( ><)「今のところありませんが、逆に、まだ対策チームを編成する様子もありません」

(,,゚Д゚)「サナエのババア、何考えてんだ。
    それはそうと、お前の方の仕事はどうラギ」

( ><)「僕の方は小さな事件ばかりで、未成年よりも年寄りの万引きの方が増えています。
     正直、誰にでも出来る事件ばかりですよ。
     どうにもサナエ所長は僕らを引き離しておきたいみたいですね」

(,,゚Д゚)「らしいな。まぁいい。
    ビロード、お前はお前で仕事に専念しろラギ。
    俺は俺でやっておくラギ」

( ><)「分かりました。
     そうだ、僕も携帯電話を買ったので何かあったら連絡をください」

13 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:35:32.968 ID:Wo5nfMAQ0.net

この街では未成年が加害者の場合、法廷にカメラを持ち込むことが禁止されている。
そこで記者たちは犯人の姿をスケッチで残すのだが、犯人が素顔の状態で法廷に立つことは極めて珍しい。
これはおそらく、一瞬だけ見えた犯人の姿を描いたものなのだろう。
使えるかどうかは別として、これを手がかりに進めていくしかない。

気になるのは、犯人がすでに出所しているという事だった。
模範囚であっても、あれだけの事件を起こしたのだから刑期が短縮されることはあり得ない。
治療室から三つの担架が運び出される音が聞こえ、トラギコは婦警たちと共に病室に付いていくことにした。
三人の女児は特別病室へと運ばれ、大きなベッドの上に寝かされた。

顔に痛々しい傷を負った女児もいれば、両腕をギブスで固められた女児もいた。
彼女達がこのような仕打ちを受けていい理由など、この世のどこにもない。
改めて犯人を捕まえ、然るべき罰を受けさせることを誓ったトラギコは婦警たちに伝言を残して外に出ることにした。

(,,゚Д゚)「誰が何を持って来ても、絶対に食わせるな。
    いいな、面会も全て拒否ラギ。
    犯人が見つかって捕まるまでは、この子たちを他の連中に会わせるなよ」

「分かりました、出来る限りの手を尽くします」

(,,゚Д゚)「俺を殺そうとした奴らは銃を持って、しかもホテルに放火をしたラギ。
    そしてこの子たちを襲った屑は毒を盛ってきたラギ。
    相手を気が狂った変態だと思うな。
    相手は正真正銘、行動力のある屑ラギ」

病院から出てトラギコが向かったのは、いつも朝食を食べていたコーヒーショップだった。

イ´^っ^`カ「おや、今日は遅いですね」

(,,゚Д゚)「まぁな。
    いつものセットと、昼飯用にでかいサンドイッチを頼むラギ」

何はともあれ、まずは食事を済ませるところからトラギコは始めることにした。
空腹の状態では万全ではない。
急いで朝食を済ませ、昼食を手に入れると、街の散策を始めた。
昼を過ぎると青空は消え、分厚い雲が空を覆っていた。

雪の粒も大きさを増し、溶けて汚れていた雪の上に新たに降り積もり、白い絨毯を作り出しつつあった。
午後三時を過ぎると、街は雪に覆われ、交通の麻痺が始まった。
道を歩く人影も減り、次第に車の数も減った。
だがトラギコは歩き続け、すれ違う人の顔を観察していた。

――そして陽が完全に落ち、世界が白と黒に包まれた頃、トラギコの姿は街の中でもゴロツキが集まることで有名な酒場にあった。
酒場は連日狂気じみた若者たちの叫び声や怒鳴り声で賑やかになるのだが、その日は、誰一人として大きな声を発することはなかった。
店に入るまでは笑顔を浮かべていた人間も、店内の異様な空気を感じるとすぐに真顔になり、席についても無言のまま時間を過ごしていた。
店の外に出たり席を立ったりすることなど、まるで出来なかった。

ジャーゲンの若者たちが最も恐れている男がそこにいるのだから、無理もない。

(,,゚Д゚)「お前らに話があるラギ」

誰も返事をしなかった。
ラジオから流れてくる音が不気味に店内に響く。
それ以上に、トラギコの声は人々の耳に届き、支配していた。

(,,゚Д゚)「今朝、ブルーハーツ児童養護施設が襲われ、子供たちが強姦され、殺されたラギ」

店内の客は一人として、身じろぎひとつしない。

(,,゚Д゚)「俺はその犯人を捜しているラギ」

73 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 22:08:42.606 ID:g5WlT+fLd.net

35 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:23:39.740 ID:hh2AZhgUa.net

しえん

29 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:13:22.589 ID:Wo5nfMAQ0.net

ビンズはプラットホームに向かってラストスパートをかける。
トラギコは走りながらも、両手でM8000を構える。
銃爪に指をかけ、弾倉の中身を撃ち尽くしてでも止める覚悟を決めた。

――太陽が落ちて来たかのような眩い閃光が、二人の男を正面から容赦なく照らし出した。

(,,>Д<)「なっ?!」

思わず手で目を庇うほどの眩さ。
闇に慣れた目にはあまりにも強すぎる光と共に、大勢の警官が現れ、ビンズを羽交い絞めにして押し倒した。
そして、トラギコも数人の警官に囲まれ、疾走を妨害された。

(#゚Д゚)「どけよ、お前ら!!」

「容疑者は確保しました、落ち着いてください!!」

ビンズはそのまま隠れていたパトカーに乗せられ、連行されていった。
残されたトラギコを囲む警官達が離れ、トラギコの怒りの矛先が自分に向けられないよう、両手を小さく挙げてこれ以上は何もしない事をアピールする。

(#゚Д゚)「正直に教えてくれラギ。
    これは所長の差し金ラギか?」

妙なのはビロードたちよりも先に警官がこの場所に到着できた理由だ。
何者かの手引きが無い限り、不可能なはずだった。

「……はい、サナエ所長からの指示です」

(,,゚Д゚)「ビロードはどこラギ?」

警官は気まずそうに息を飲んで、そして、答えた。

「先に、署に戻っていただいています。
も、勿論これも所長の指示です」

と言う事は、アサピーは逃げおおせたのだろう。
今もどこかの物陰で写真を撮っているかもしれない。

(,,゚Д゚)「宿舎の七階に容疑者の共犯者がいるラギ。
    はやく病院に連れて行くなり、どうにかしておいてくれ。
    どうせ俺も連れ戻るように命令されてるんだろ」

トラギコの腹の虫が収まらなくとも、容疑者が確保された。
ならば、それでいい。
事件を防げるのであればそれに越したことはない。
事件解決を前に、個人の矜持は無視して然るべきだ。

今の状況が到底受け入れられないような物であっても、ここで怒り狂うのは無意味なのである。

「済みません、トラギコさん。
我々もやりたくはないのですが、分かってください」

(,,゚Д゚)「……さっさとしてくれ、少し疲れたラギ」

警官達に誘導され、パトカーに乗せられる。
窓の外に目をやると、コンテナの上に人影が見えた。
恐らくアサピーだろうが、もう、どうでもよかった。
後は容疑者であるビンズが犯人となれば、トラギコが走った意味もある。

66 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:32:52.546 ID:Wo5nfMAQ0.net

この街で子供の命は極めて安く、極めて容易に取引される材料となっている。
実際、親が子供に売春を強要する例は連日報告されている。
売春で出来た子供を売春によって育て、その子供も売春によって生きていく。
皮肉な連鎖の続く街に生きる人間達は、金で簡単に動いてくれる。

それが、サナエがこの街で学んだことの一つだった。
やがて、トラギコの介入によって事件の真相が解き明かされる日が遅かれ早かれ来ると判断し、これまでの余罪が明らかになる前に彼を消すことにした。
だが、その全ては失敗した。
警察の装備を横流しした殺し屋たちもトラギコに返り討ちに合い、あまつさえ、現場に証拠を残して死ぬ無能ぶりを晒してくれた。

ドクオはまるめ込んで証拠隠滅の手助けをしてくれたのだと思っていたが、この土壇場で裏切り、証拠を全て処分せず、遺伝子情報の分析までも依頼していた。
幸いなことにその情報を偶然手に入れたサナエは、遺伝子情報もろとも屠ろうと決め、鑑識課の元を訪れた。
部屋にはビロードとハシュマルがおり、二人は突然の来訪に驚いた様子だった。
だが労いの言葉とコーヒーを持参したのが功を奏し、二人は怪訝な顔をしていたが、警戒はしなかった。

無防備な状態の二人に愚痴を幾つかこぼし、その場を立ち去る振りをしてPSS自動拳銃を取り出し、まず初めにビロードを撃った。
PSSは静音性を高めるために小口径であり、装弾数も少ない。
銃弾はビロードの胸に着弾し、彼は何が起きたのか分からない表情のままその場に座り込んだ。
異音に振り返りそうになったハシュマルは喉を撃ち抜き、更に、その背中にも銃弾を浴びせた。

ハシュマルは自ら作り出した血溜まりの上に倒れ、動かなくなった。
ビロードは胸に手を当て、付着した赤黒い血を見て呆然としている。
その間に、彼の下には血が広がっている。

(;><)『所長……な、なんで……』

ビロードが手に持っていた検査結果を奪い、そして、ハシュマルが机の上に置いていた遺伝子のサンプルも回収した。
そして、ビロードの胸に更に銃弾を撃ち込んだ。
最後の一発を頭に撃ち込もうとしたが、すでに弾倉の中は空になっていた。
警察は未だに犯人を特定できていない事から、彼がサナエの事を話すことなく死んだのだと分かった。

目的を達し、今日の裁判で全てが終わるかに思われたが、トラギコがそれを崩した。
彼女が二十年近くも秘密にしてきた全てが公になり、マスコミの人間がそれを街中にラジオで流したことで、今やサナエとジョセフは姿を表に出せなくなっていた。
こうなると分かっていれば、わざわざ施設の人間を買収せずにおけばよかったと後悔ばかりが生まれてくる。
あれがなければ、もう少し世間の風当たりが弱くなったかもしれない。

全てはもう手遅れ。
彼女達が思い描いたシナリオは全て白紙となり、待っているのは失脚だ。
ジョセフは一気に老け込み、言葉を発するだけの力も残されていなさそうだった。
すでに家の周りにはパパラッチやデモ隊の人間が押し寄せてきており、気が休まることはない。

だがこのマンションは極めて堅牢に出来ており、彼女の部屋は最上階である十三階にあった。
所長の椅子は勿論だが、明日には正式な処分がジュスティアから通達される。
懲戒免職にでもなれば、彼女は何の保護も受けられない。
今夜中にどこかに逃げ出さなければ、暴徒に殺されるかもしれない。

61 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 21:18:24.262 ID:vmNCFRd3a.net

oh?!

37 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:27:00.649 ID:Wo5nfMAQ0.net

(,,゚Д゚)「ビロード、明日の公判までまだ時間がある。
    出来る限り証拠を集めるぞ」

( ><)「今から、ですか?」

(,,゚Д゚)「今だから出来る事があるラギ。
    署で起きた火災、どう考えても人為的な放火だ。
    そして俺を殺すよう依頼してきた仲介人が自殺したラギ。
    その犯人を突き止める。

    今日、俺は午後からブルーハーツに行く」

裁判が始まったところで、諦めていい理由にはならない。
犯人が捕まっただけで、事件の真相を解き明かしてはいない。
再びこの事件が起きないようにするためにも、警察内にいる細胞を潰す必要がある。

( ><)「分かりました。
     僕に出来ることがあれば言ってください」

幸いにも、トラギコはこの事件の担当者として一任されており、裁判中は他の事件に駆り出されることもなく時間がある。
そして、トラギコは裏切り者の一人に心当たりがあった。

(,,゚Д゚)「そう言ってくれると思ってた。
    実は頼みが一つだけあるんだ」

署に戻り、トラギコは証拠品が保管されていた場所に向かった。
保管庫の扉は開かれ、まだ何かが焦げた匂いが漂っている。
電気をつけ、被害状況を確認することにした。
火災が起きてから早い段階で消火作業を行ったようで、被害は一部だけに留まっている。

発火場所は例の事件に関する証拠品が収められた棚の下。
不自然な焦げ目が可燃性の液体の使用を物語っている。
鉄製の棚にも関わらず上の棚にある物が燃えたのは、そこに可燃性の液体をかけたからだろう。
棚には確かに黒い煤が付着しているが、上の棚に燃え広がるには燃え方が甘い。

(‘A`)「どうしたんだ、こんなところに呼んで?」

ドクオの声を聞いても、トラギコは顔を上げなかった。
ビロードに頼んだのは、ドクオにこの場所に一人で来るように伝えてもらう事だった。

(,,゚Д゚)「なぁ、ドクオ。
    どうしてここが燃えることになったんだ」

(‘A`)「言いたくはねぇが、誰かが燃やしたからだろ」

(,,゚Д゚)「だろうな。
    自然発火なんてのはあり得ないラギ。
    それこそ、鑑識の人間が自然発火するようなヤバい物をここに持ってくるはずがない。
    意図的に燃やすしか方法はない。

    だけど、どうしてここだけ燃やす必要があったラギ」

(‘A`)「証拠が残ってると困る連中がいるんだろ」

(,,゚Д゚)「それならいっそ、この場所全て燃やせばよかった話ラギ。
    どう見ても不自然な燃え方で、証拠を消すために燃やしたとしか思えない。
    そんな事をする意味は何だ」

わざと注目させるために燃やしたのだとしたら、本命は別にある。
例えば、発火地点にあった事件の証拠品を燃やし、それを悟られないためにより注目度の高い事件の証拠品を燃やしたのではないだろうか。

34 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:21:00.051 ID:Wo5nfMAQ0.net

検事と弁護士がそれぞれの位置に着き、続いて、オレンジ色の囚人服を着た犯人が登場した。
一見すれば普通の青年にも見えるが、これだけの状況にありながら笑顔を浮かべている姿は不気味と言わざるを得ない。
一ミリほどしかない黒髪はまるで似合っていない。
筋肉ではなく贅肉がついた体は、運動とはあまり縁のない事を示唆している。

食べ物に困っている様子はない。
苦労して育ったわけでもなさそうだ。
これが連続女児強姦殺人事件の犯人。
裁判長が軽く咳払いをして、会場に静寂を求めた。

沈黙したのを確認し、裁判長がゆっくりと話を始める。

「それではこれより、検察側より被告人ビンズ・アノールが起こした事件についての説明を始めます。
被告人は事実と違う事があれば、その場で述べるように」

黒いスーツに身を固めたメイが滑らかな口調で説明を始めた。

「こちらで確認している限り、被告人は十二月六日にナミ・ブラヴァーノ、同月七日にエミリー・ライアンを。
同月十一日、人身売買組織から買った身元不明の少女を。
同月十二日深夜から翌未明にかけて、ブルーハーツ児童養護施設にいる少女十八名に対して性的な暴行及び殺害・未遂を起こしました。
また、同養護施設にいた男児十九名は毒殺、一名は殴る・蹴るなどの暴行により殺害しました」

「弁護側、何かありますか」

ビンズが弁護士に耳打ちし、ライトは深く頷いて挙手をした。

(`・_ゝ・´)「男児一名の殺害については意図的ではなく、偶発的な事故であったと」

「事故?」

メイが訝しげに聞き返す。
再びビンズがライトに耳打ちし、彼が口を開く。

(`・_ゝ・´)「毒による人道的な殺害を予定していたが、彼が毒を口にせず、彼が邪魔をしてきたので殺したと」

「検察側は事件の詳細について、被告人の自白を得られていません。
この場で事件についての説明を求めます」

「検察側の意見を受理します。
被告人、詳細を」

(`・_ゝ・´)「異議あり。
     被告人からの供述書を受け取っています。
     弁護側がそれを代読します」

「異議あり。
弁護側が代読する必要性がありません。
そして、供述書について我々は知らされていません」

「弁護側の異議を却下します。
弁護側は供述書を検察側に提出しなさい」

ライトは肩を竦め、茶封筒に入った供述書を持ち上げてみせた。
そしてそれをメイに手渡し、己の席に戻った。
ビンズはゆっくりと立ちあがり、気だるそうに体を傾けながら証言台の前に歩いて行った。

「ビンズ・アノール、説明を」

(::゚∀゚::)「はい。
     どこから説明をすればいいですか?」

44 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 20:46:01.128 ID:Wo5nfMAQ0.net

(,,゚Д゚)「俺にどうしろって言うんだ」

(‘A`)「あの屑野郎は当然最高刑を食らわせてやってもらいたい。
   そのついでに、この二人も裁いてもらいたいんだ。
   いや、分かってる。
   お前がそういうのに興味が無いってことは重々分かっている。

   ……あんなキチガイ野郎を野放しになんてしたくもないし、それを後押しする奴らも気に入らない。
   親として、俺はあいつらを裁いてほしいんだ」

(,,゚Д゚)「所長は分かるが、市長の関与が分からねぇラギ。
   何かネタでもあるのかよ」

実際、市長は法の整備をしただけで今回の事件には関与していない。

(‘A`)「未成年者が犯罪を起こした際、その犯罪歴諸々が消される法律が本格始動したのはいつか分かるか?」

(,,゚Д゚)「……十年前だったな」

(‘A`)「お前は知らないだろうが、十年前、ある事件が起きた。
   一人の少年が公園で女児を強姦したんだ。
   犯人が捕まるまでの間は、約三か月。
   その間に例の法律が動き出し、犯人の少年は刑務所に行き、最終的には自由を手にした」

(,,゚Д゚)「その少年ってのは、市長の子供か。
    自分の子供可愛さに法律を、って言いたいのか」

(‘A`)「噂の域は出ないけどな。
   そして、俺の見立てだとその時の子供ってのが」

(,,゚Д゚)「今回の犯人、ってことラギか」

(‘A`)「全ては俺の推測だ。
   後は裏付けの証拠が必要になる。
   今、犯人のDNAと市長のDNAを使って親子関係を調べてもらってる。
   これで関係が分かれば、明日の裁判で面白いことになるぞ」

(,,゚Д゚)「……なぁドクオ。
   お前、家族が、って言ってたけどそこまでしていいのかよ。
   殺し屋まで差し向けてくる奴が後ろにいるんだぞ?」

どうにも彼の動きが切羽詰っているように見えて仕方がない。
まるで、やり残したことが無いように清算をしているようだ。
唐突な罪の告白から、トラギコへの依頼。
一体何が彼をここまで動かしたのだろうか。

(‘A`)「家族は今朝、ジュスティアに逃がした。
   俺のやったことが見つかる前に、奴を捕まえてもらいたいんだ」

(,,゚Д゚)「……お前がDNA鑑定を依頼しているのはどこラギ?」

今の時代が作り出したものではないが、気が遠くなるほど昔の人類が開発したDAT――高性能な情報処理端末――を使えば誰でも遺伝子情報を調べる事が出来る。
唯一の問題は、DATは極めて希少であり、操作できる人間は限られているという点だ。
小さな企業は操作することはおろか、購入することすら出来ない。
この街でDATを用いてそのような検査を請け負う場所は、一か所しかない。

(‘A`)「ここだ。
   今、ビロードを貼りつかせてる」

9 :以下、?ちゃんねるからVIPがお送りします:2018/12/02(日) 19:25:50.340 ID:vmNCFRd3a.net

しえん

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